オンプレ環境に存在するActive Directory (以下、オンプレAD) とAzure ADの情報連携を行うAzure AD Connectは、通常自動的にバージョンアップがされる。これは、Get-ADSyncAutoUpgrade
コマンドレットを使うことで確認することができる。
PS C:\> Get-ADSyncAutoUpgrade
Enabled
ただし、以下Azure AD Connectのリリースノートを見ると、「Released for download only, not available for auto upgrade」となっており、自動的にバージョンアップされないものが多く存在する。
特に2021/7/10にAzure AD Connectの新メジャーバージョンとなる2.0.3.0がリリースされており、こちらも自動的にバージョンアップはされないため、手動によるバージョンアップが必要となる。
今回、Azure AD Connectを1.6.4.0の環境から2.0.8.0に手動でバージョンアップしたので、その手順を記載する。なお、Azure AD Connect自体の導入手順については、以下別記事を参照いただきたい。
環境
バージョンアップ対象となるオンプレADは以下の通り。
- Windows Server 2016 Standard
- Azure AD Connect 1.6.4.0
なお、Azure AD Connect 2.0.8.0は、Windows Server 2016以降のOSでなければ使うことができない。古いOSを使っている場合は、1.x台の最新バージョンとなる「1.6.11.3」を利用し続ける必要がある。
バージョンアップ手順
1. Azure AD Connectをダウンロード
Azure AD Connectの最新版を以下からダウンロードし、オンプレADに配置する。
2. TLS 1.2を有効化
Azure AD Connect 2.xはTSL 1.2の強制が必要となる。もし未設定のままインストーラを起動すると、以下の通り「TLSの正しくないバージョン」のエラーで弾かれてしまう。
本事象を解消するため、以下マニュアルに記載のレジストリ設定を行えばよい。なお、レジストリ設定後、特に再起動は不要となる。
レジストリ設定は複数個所存在するので、以下の通りPowerShellによる設定が手っ取り早い。
New-Item 'HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -name 'SystemDefaultTlsVersions' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -name 'SchUseStrongCrypto' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-Item 'HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -name 'SystemDefaultTlsVersions' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\.NETFramework\v4.0.30319' -name 'SchUseStrongCrypto' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-Item 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Server' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Server' -name 'Enabled' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Server' -name 'DisabledByDefault' -value 0 -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-Item 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Client' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Client' -name 'Enabled' -value '1' -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
New-ItemProperty -path 'HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols\TLS 1.2\Client' -name 'DisabledByDefault' -value 0 -PropertyType 'DWord' -Force | Out-Null
Write-Host 'TLS 1.2 has been enabled.'
3. インストールウィザードを起動
レジストリ設定後、再度インストーラを起動すると、以下の通りChange、Repair、Removeのいずれかを選択できる画面が表示される。非常にわかりづらいが、バージョンアップの場合は「Repair」を選択する。
4. バージョンアップ開始
「Azure AD Connectへようこそ」の画面では、ライセンス条項に同意にチェックを入れ、「続行」を選択する。
「Azure Active Directory Connectのアップグレード」の画面では、「アップグレード」を選択する。
バージョンアップの処理が開始されるので数分待つと、「Azure ADに接続」の画面に遷移する。ここでは、Azure ADのグローバル管理者のユーザ及びパスワードを入力する。
「構成の準備完了」の画面に遷移するので、「構成が完了したら、同期プロセスを開始する」にチェックを入れ、「アップグレード」を選択する。
特に問題なければ「構成が完了しました」の画面に遷移し、バージョンアップが完了となる。
5. インストール後確認
コントロールパネルから「プログラムと機能」を確認すると、Azure AD Connectのバージョンが2.0.8.0になっていることがわかる。また、バージョンアップ時にMicrosoft SQL Server 2019がインストールされていることがわかる。
旧バージョンで使用されていたMicrosoft SQL Server 2012が残っているが、こちらは消してよいものかわからないため、このままの手を付けないことにした。
また、Microsoft 365管理センターにて同期状況を確認すると、前回の同期が4分前になっており、問題なく同期が成功していることがわかる。
以上で、Azure AD Connectのバージョンアップは完了となる。
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