DELLより提供されている仮想ストレージアプライアンスである「UnityVSA」は、コミュニティエディションが用意されており、管理可能な容量が4TBに制限されているものの、無償で使用することができるストレージアプライアンスとなる。
UnityVSAではNFS/CIFSのファイルストレージ機能だけでなくiSCSIによるブロックストレージ機能も利用できる。さらにはスナップショットやレプリケーションの機能も利用できることから、一般的なストレージOSの動作確認や、設定手順・操作手順の学習用途として、非常に有用となる。
※本記事では説明はしないが、VMware SRMなどと連携して、アレイベースのレプリケーションを利用したDR動作の検証なども実施できる。
本記事では、ストレージアプライアンスである「UnityVSA」をESXi上の仮想マシンとしてインストールする手順を紹介する。
環境
今回は、ESXi上にUnityVSAのアプライアンスを展開する。CPUは2コア、メモリは12GB必要となり、メモリの使用量がやや大きいので注意すること。
- UnityVSA 5.0.3
- ESXi 6.7 Update 3
インストール手順
1. OVAファイルをダウンロード
以下URLにて「Agree & Download」をクリックして、OVAファイルをダウンロードする。
2. OVAのデプロイ
ESXiにてダウンロードしたOVAをデプロイする。デプロイ時にホスト名とIPアドレスを設定することができるが、なぜか設定が反映されない状態で起動してしまう。
そのため、IPアドレスが固定されないことから、初期設定時はDHCPでIPアドレスを取得できる必要がある。
※厳密にはCLIにてIPアドレス設定をすればDHCPはなくても構築はできると思われる。
3. UnityVSAの起動
デプロイ後、UnityVSAを起動させる。起動完了まで、10~15分要するので、気長に待つこと。起動が完了すると、コンソール上に「Unisphere IP」として、DHCPで取得したIPアドレスが表示される。
初期設定手順
1. UnityVSAへログイン
コンソールに表示されたIPアドレスに対して、Webブラウザよりログインを行う。デフォルトのユーザとパスワードは以下のとなる。
- ユーザ : admin
- パスワード : Password123#
2. インストールウィザードに従い初期設定実施
初回ログイン時にはインストールウィザードにて初期設定の実施が必要となる。以下設定項目と設定項目を記載する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
Admin and Service Password | 任意のパスワードを設定。「Set service password the same as admin password」にチェックする。別パスワードを設定したい場合はチェックを外す。 |
DNS Servers | 「Configure DNS server address manually」を選択し、DNSサーバのIPアドレスを設定する。 |
NTP Servers | NTPサーバのIPアドレスを設定する。 |
Unisphere Licenses | 「【補足】ライセンス発行」を参照。 |
Pools | プールは後で作成することとし、設定せず次に進む。 |
Alert Settings | 特にメールによる監視設定は不要となるため、設定せず次に進む。 |
Proxy Server | UnityVSAはインターネット接続せずとも使用できるので設定不要となる。 |
iSCSI Interfaces | iSCSI用のインタフェースは後で作成することとし、設定せず次に進む。 |
NAS Servers | NFSやCIFSで用いるNAS Serversは後で作成することとし、設定せず次に進む。 |
【補足】ライセンス発行
インストールウィザードの「Unisphere Licenses|」の画面では以下のようにインストール時に自動生成される「System UUID」が表示される。
この情報を控えたうえで、DELLの評価ライセンス発行サイトに登録しライセンスの発行を行う。
正常にライセンス発行がされるとライセンスファイル(XXXX_EUVSA_XXXX_18-Jun-2021.lic
といったファイル名)がダウンロードできる。
ダウンロードしたライセンスファイルをアップロードすることで、UnityVSAのライセンス登録は完了となる。
プール設定
1. UnityVSAの仮想マシンに仮想ディスクを追加
UnityVSAではデータを保存する領域を「プール」という単位で管理する。OVAファイル展開時に仮想ディスクが3つ接続されているが、これらはOSインストール領域であり、プールとしては利用できないため、VMware Host ClientやvSphere Clientなどから、新規ディスクを仮想マシンに接続する。
なお、仮想ディスクを接続すると自動でディスクを認識するため、UnityVSAの再起動等は不要となる。
2. プールを作成
左メニューにて「Pools」を選択し、「Pools」タブを選択する。「+」を押してファイルシステムを新規作成する。
以下に、プールを作成するための設定項目を記載する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
Name and Description | プールの名前を指定する。 |
Tier Assignment | UnityVSAに接続した仮想ディスクを選択し、「Storage Tier」を設定する。私の環境はSSDだったため、Performance Tier を選択した。 |
Tier | 特に設定項目はないためスキップする。 |
Virtual Drives | 特に設定項目はないためスキップする。 |
Capability Profile Name | 特に設定項目はないためスキップする。 |
NFS設定
1. NFS Serverの作成
UnityVSAでは、NFSやCIFSを利用する際に、まずNAS Serverと呼ばれるファイル共有機能の作成が必要となる。
左メニューにて「File」を選択し、「NAS Server」タブを選択する。「+」を押してNAS Serverを新規作成する。
以下に、NAS ServerをNFSで利用するための設定項目を記載する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
General | NAS Serverの名前、プールを選択する。冗長化されたUnityを使う場合は、動作するコントローラ (SP ; Storage Processerという) を選択することができる。今回はシングル構成なのでSP A を選択する。 |
Interface | NAS Serverが使用するインタフェースとIPアドレスを設定する。ここで設定したIPアドレスに対して、NFSやCIFSのファイル共有ができるようになる。 |
Sharing Protocols | 「Enable NFSv4」を選択する。 |
Unix Directory Service | NISやLDAPによる認証を行う場合は設定するが、今回はスキップする。 |
DNS | NAS Serverに名前解決を行わせる場合は設定するが、今回は設定不要のためスキップする。 |
Replication | NFSやCIFS領域をレプリケーションする場合は、NAS Serverのレプリケーションの設定が必要となる。今回はレプリケーションの設定は不要のためスキップする。 |
2. ファイルシステム及びNFS領域の作成
左メニューにて「File」を選択し、「File Systems」タブを選択する。「+」を押してファイルシステムを新規作成する。ファイルシステムを作成する際に、NFSやCIFSの設定を行うことができる。
<図>
以下に、ファイルシステムをNFSで利用するための設定項目を記載する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
Protocol | 「Linux/Unix Shares (NFS)」または「Windows Shares (SMB)」を選択する。今回はNFSとする。NAS Serverが複数ある場合は、紐づけるNAS Serverを選択する。 |
Name | ファイルシステムの名称を設定する。 |
FLR | FLRはFile Level Retentionのことであり、指定した期間を超えて保管されているファイルの変更や削除をできないよう、ロックを掛ける機能となる。今回は設定しないが、一度有効にすると無効化できないので注意すること。 |
Storage | プール及びサイズを選択する。最小サイズは3GBとなる。 |
Shares | NFSまたはCIFSを選択する。NFSの場合はNFSのエクスポート名を指定する。 |
Access | NFS領域にアクセスする設定を行う。デフォルト権限は「No Access」としてアクセス拒否をし、必要なホストのみに権限を付けるホワイトリスト方式による設定が定番だろう。 |
Snapshot | 定期的にスナップショットを取得する場合は設定する。 |
Replication | 今回はレプリケーションの設定は不要のためスキップする。 |
iSCSI設定
1. iSCSI用インタフェースの作成
iSCSIを利用する前に、まずはiSCSI用のインタフェースを作成する。左メニューにて「Block」を選択し、「iSCSI Interfaces」タブを選択する。「+」を押してインタフェースを新規作成する。
インタフェース作成は、割り当てるインタフェースとIPアドレスを設定する。IQNの名前に付与されるIQN Aliasは自動で設定されるので、特に問題なければそのままでよいだろう。
2. iSCSI用のLUNを作成
左メニューにて「Block」を選択し、「LUNs」タブを選択する。「+」を押してインタフェースを新規作成する。
以下に、LUN作成時の設定項目を記載する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
Configure | LUNの名称、保存先プール、サイズを設定する。最小サイズは1GBとなる。 |
Access | LUN領域にアクセスする設定を行う。今回は設定手順は割愛するが、「Hosts」メニューにて、iSCSIイニシエータのIQN情報を登録する必要がある。 |
Snapshot | 定期的にスナップショットを取得する場合は設定する。 |
Replication | 今回はレプリケーションの設定は不要のためスキップする。 |
まとめ
以上で、UnityVSAのESXi上へのインストールと初期設定の手順は完了となる。もう1台UnityVSAを作れば、UnityVSA間でレプリケーションを実装することもできる。VMware製品の各種機能(VASAやSRMなど)とも連携可能であり、エンタープライズ製品とほぼ同様の機能を無償で使えるため、非常に有用であると感じた。
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