QNAPというとNASのイメージが強いが、単純なNASの機能以外にも、NASが持つCPU、メモリ、ディスクリソースを利用して仮想マシンやコンテナを稼働させる機能を持っている。例えば、私が自宅で稼働させているQNAP NAS TS-231Pにおいては、「Container Station」というアプリを使うことでDockerコンテナなどが利用できる。
このようにQNAP NASで持っていた「NAS上で仮想マシンやコンテナを動かす」という機能をさらに強化し、仮想マシンだけでなく仮想ネットワークも構成できる製品として、「QNAP QuCPEシリーズ」がリリースされた。
今回、QNAP JAPAN様よりQuCPE-3032をお貸しいただいたので、実際にQuCPE-3032の初期セットアップを行い、仮想マシンと仮想ネットワークの作成をしてみた。
実際の作業内容とその際に気づいた点などを2回にわけて記載していく。
- QNAP QuCPE-3032レビュー① (初期セットアップ編) ←★本記事
- QNAP QuCPE-3032レビュー② (仮想マシンと仮想ネットワークの作成編)
QuCPE-3032ハードウェア構成
ハードウェア構成
QuCPE-3032は以下の通りとなる。NASと同様、データディスクは別途準備が必要となり、QuCPEの場合はM.2 SSD (NVMe)専用となる。
- CPU : Intel® Atom® C3558R 4コア 2.4 GHz プロセッサ
- メモリ : 8GB (拡張可能)
- ディスク :
- システムディスク : 約60GB
- データディスク : 別売 (M.2 SSD (NVMe)スロット x 2に追加)
ネットワーク構成
QuCPE-3032は多数のネットワークインターフェースを持っている。
- 10GbE x 2ポート (SFP+が別途必要)
- 2.5GbE-T x 8ポート
本当は10GbEや2.5GbEの接続を試せるとよいのだが、残念ながら私の検証環境には1GbEのポートしかないので、1Gbpsで接続する。以下に簡単なネットワーク構成図を記載する。
初期セットアップ (M2.SSDの取り付けと初期設定)
QuCPEを使用できるようにするために、M.2 SSDの取り付けと初期セットアップを行う。初期セットアップは、公式のユーザーガイドがあるため、そちらも参考に実施しよう。
1. 開封
外観はよくある小さめの小規模オフィス向けのルーター程度の大きさとなっており、場所を取らずに設置が可能となっている。
※ただし、後述するが時折ファンの回転数が高くなる際に音が大きくなることがあるので、あまり人が密集する場所に配置は避けた方がよいだろう。
なお、19インチラックに取り付け可能なラックマウントキットもオプション製品となるが販売されており、ラックマウントすることも可能となる。
2. M2.SSDの取り付け
M2.SSDを取り付けるため、2か所のネジを外し、蓋をスライドさせると内部にアクセスすることができる。
写真の①②と記載がある個所がM2.SSDスロットなので、後部にあるツメを起こしてからM2.SSDを差し込むだけで取付することができる。
なお、今回は2つのスロットに同一製品のM2.SSDを取り付けを行っている。これらのM2.SSDは、初期設定時にRAID1で構成される。
3. 起動
電源ボタンを押して起動すると、いつものQNAP NASと同じビープ音が数回鳴って5分程度で起動する。
起動後の静穏性については、基本的にファンの回転数は低く回転していれば特に気にならない音量となる。ただし、内部の温度がある一定温度を超えるとファンが強く回転することがある。この場合は、結構な音量を発することから、機器を設置する際は、暖房から離れたところや人から離れたところに設置した方がよいだろう。
※ファンの回転数はコントロールパネルからも設定でき、回転数を制御することは可能。
QuCPEが初期設定の状態においては、すべてのポートでDHCPクライアントが動作しているので、接続したネットワークにDHCPサーバがあれば、IPアドレスが自動で取得される。
ただし、起動時点では本体からはIPアドレス等は確認できないので、Qfinderを使ってQuCPEを発見しよう。なお、QNAP NASのOSがQTSに対し、QuCPEはQNEというOS名称になっている。
4. 初期設定
Qfinderで見つけたQuCPEをダブルクリックすれば、ブラウザで管理画面に接続することができる。初期化された状態の場合は「スマートインストレーション」の画面となり、各種初期設定をすることができる。
初期設定では以下の項目を設定する。
設定項目 | 説明 |
---|---|
ファームウェアバージョン指定 | 新しいファームウェアがある場合はここでバージョンアップをすることができる。 |
動作モード | スタンドアロンモードとクラウドマネジメントモードを設定できる。今回はスタンドアロンモードとする。 |
アプリケーションディスク | M2.SSDのディスクのRAIDモードを指定するが、RAID1のみ選択可能だった。 |
ユーザー名とパスワード | ホスト名、ユーザー名、パスワードを設定する。 |
日付と時刻の設定 | タイムゾーンとNTPサーバを設定する。 |
設定後、初期設定反映の処理が開始される。この処理は5分ほどで完了する。
5. 管理画面にログイン
初期設定が完了すると、ログイン画面に遷移する。先ほど作成したユーザでログインすると、QNAP NASでおなじみのQTSと似たようなQNEの管理画面が表示される。
管理画面はQNAP NASと比較すると、軽快に画面遷移をして操作できると感じる。これはCPUやメモリの性能によるものと思われる。
また、QNAP NASとの大きな違いは、以下アプリケーションが存在することだろう。
アプリケーション | 説明 |
---|---|
Network Manager | 物理ポートの役割設定(WAN、LAN、VNF(仮想ネットワーク用))などの構成・管理を行う。 |
Service Composer | 仮想マシンと仮想ネットワークの構成・管理を行う。 |
Virtualization Station | 仮想マシンの構成・管理を行う。 |
以上で、QuCPE-3032の初期セットアップは完了となる。
AMIZ Cloudとの連携
AMIZ Cloudと呼ばれるQNAPが提供するクラウドサービスを利用することで、複数台のQuCPEと、QuCPE上で稼働している仮想マシンやコンテナをリモートから管理することができる。
QuCPEにて「myQNAPcloud」アプリを開き「クラウド管理モード」を選択するとウィザードが表示されるので、指示に従いながら設定するだけで、AMIZ Cloudとの連携が完了する。
動作はかなり遅いが、リモートから仮想マシンのコンソールも開くことができるため、簡単な操作ならリモートからもすることができそうだ。
AMIZ Cloudとの連携機能を用いれば、QuCPEを複数の拠点に配置するような構成においては、保守面で大きなメリットが出るだろう。
次回
次回はQuCPEに仮想マシンと仮想ネットワークの設定を行い、QuCPE上の仮想マシンに実際にアクセスできるよう構成してみたいと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿