vCenter Server Appliance (vCSA) について、バージョン6.5以降より、vCenter High Availability (vCenter HA) と呼ばれる冗長化機能が利用できるようになった。ちなみに、vCenter Serverの高可用性の手法については、VMware社の以下KBにてまとめられている。
サポート対象の vCenter Server 高可用性オプション (1024051)
https://kb.vmware.com/s/article/1024051?lang=ja
今回、手順確認と動作確認を目的として、実際にvCSAを構築して、vCenter HAの設定をしてみた。また、実際にフェイルオーバーさせた際の、vCenter Serverが操作できなくなる時間をざっくり計測してみた。
実施環境
今回の環境は以下の通り。vCenter HAを構成する際は、通常のvCenter Serverへのアクセス用のネットワークとは別に、vCenter HA用のネットワーク(下図のオレンジ線)を用意する必要がある。上図のように、vCenter HAでは、元のvCSA(アクティブノード)、フェイルオーバー用のvCSA(パッシブノード)、監視用のvCSA(監視ノード)の3台が必要となる。監視ノードがアクティブノードとパッシブノードにハートビートを送信し監視をする。
パッシブノードはアクティブノードと同一CPU、メモリ、ディスクが必要となる。監視用ノードは、メモリは1GBと少なく構成されるようだ。
vCenter HA設定手順
それではvCenter HAの設定手順を見ていこう。1. vCenter HAの構成の開始
vSphere Web Clientにて、「vCenter Server」→「設定」→「vCenter HA」→「構成」ボタンを押下する。2. 設定オプション
「基本」を選択する。3. ネットワークアダプタの追加
vCenter HA用のNICに付与するIPアドレスと、ポートグループを指定する。今回は分散仮想スイッチのポートグループ「DPortGroup165」を指定している。4. パッシブノードと監視ノードのIPアドレスの設定
パッシブノードと監視ノードのIPアドレスとして、前手順でアクティブノードに設定したIPアドレスと同一セグメントにて設定する。5. デプロイ構成の選択
デプロイされる際の構成が表示される。今回は検証環境の制約により、これといって選択できる項目はなかった。なお、赤丸で示した「互換性の警告」は、可用性を担保するうえで問題となる構成があることを表している。今回の互換性の警告としては、データストアがすべて同一となってしまっていることと、データストアの空き容量が不足しているという2点となっていた。実際にデータストアの空き容量不足により、一度パッシブノードの展開に失敗してしまったため、データストアの容量を増やしてやり直しをすることになってしまった。
6. 設定の確認
最後に設定の確認が表示されるので、問題なければ「完了」ボタンを押下する。「最近のタスク」にデプロイやクローン作成の進捗が表示されるので、完了までしばらく待機する。なお、私の環境では8分程度で完了した。
7. vCenter HA構成後の確認
vCenter HAの構成タスクが完了しても、フェイルオーバーが無効となっている旨の以下メッセージが表示される。------------------------------
現在、レプリケーションで障害が発生している可能性があります。自動フェイルオーバー保護は無効です。vCenter HA を有効にして間もない場合は、最初のレプリケーションがまだ進行中で、あと数分かかる状態である可能性があります。
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慌てずに1分程度待機すれば、これは解消される。
フェイルオーバー時間
vCenter HAは手動でフェイルオーバーさせることができるので、実際にフェイルオーバーを実行して、その際の切り替わり時間を計測してみることにする。vCenter HAの設定画面の右上の「フェイルオーバー開始」ボタンを押下する。確認のダイアログボックスが表示されるので、「はい」を押下する。
0分経過
Ping疎通が途絶える1分経過
Ping疎通が回復2分経過
vCSAの管理Webにアクセスすると、「503 Service Unavailable」エラーが返ってくる4分経過
Web画面は回復したが、vSphere Web Clientを表示しようとすると、「Failover in progress...」の表示となり、まだ操作はできない7分経過
「The vSphere Client web server is initializing」の画面となり、相変わらず操作はできない8分経過
vSphere Web Clientにログインできるようになるというわけで、vCenter HAを構成していたとしても、数分間の操作不能の時間が発生するので注意が必要となる。
なお、フェイルオーバー後にvCenter HAの画面を確認すると、アクティブノードとパッシブノードのIPアドレスが入れ替わっている。
管理Web用のIPアドレス(今回の場合、192.168.11.165)は、パッシブノード側に付与されていることがわかる。
まとめ
vCenter HAはフェイルオーバー時に数分レベルの切り替わり時間が発生し、その間は管理Webのアクセスが不能となることがわかった。vSphere HAによる仮想マシン再起動でも数分あればvCSAは起動できることから、2倍以上のCPU、メモリリソースを消費するほどのメリットがvCenter HAにはないと感じてしまう。さらに、vCenter Server自体の機能は、仮想マシンの稼働に影響を与えることはなく、緊急性という観点でも、vSphere HAによる再起動で十分な場合が多いだろう。
では、どのような場合にvCenter HAを使う必要があるのだろうか?以下URLに「vCenter High Availability (vCenter HA) は、ホストとハードウェアの障害に加え、vCenter Server アプリケーションの障害からの保護にも対応」とある。
vCenter High Availability を使用した vCenter Server Appliance の保護
https://docs.vmware.com/jp/VMware-vSphere/6.5/com.vmware.vsphere.avail.doc/GUID-226A925F-BF20-4A58-BF15-4A76B4CEDC84.html
従来のvSphere HAによる保護の場合は、アプリケーションの状態は監視できないため、vCenter Serverのアプリケーション障害時のフェイルオーバーを実現したい場合には、vCenter HAの構成を検討する必要はあると思われる。
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